一周年記念、匿名様リクエスト。
『ED後の騎士団で、新米兵の身長や体格が自分よりよくて凹むおっさん』
ギャグ。愛さレイヴンです。
「これでよし…と」
出来上がった書類をまとめ、立ち上がろうかと思ったとき、部屋のドアがノックされた。
レイヴンは一度持った書類を机に置きドアの向こうの人間に声をかけた。
「どうぞ」
「失礼します。シュ…レイヴンさん」
扉を開けて入ってきたのは帝国騎士団現団長、フレン・シーフォ。
フレンは中に入ってきたものの何やら申し訳なさそうな顔をしている。
おそらく名前を呼び間違えそうになったことを気にしているのだろう。
「すいません…何度も言われているのにまた間違えてしまって…」
「いや、まあ、そんな顔しなさんな。おっさんそこまで気にしてないから。ほら、特に今日はねぇ。仕方ないわよ」
ここは城内のシュヴァーンの部屋だし、特に今日は先ほどまでシュヴァーンとして仕事をしていたのだからシュヴァーンがいると思ってフレンが入ってきても無理もない。
「はい…」
「それよりこれ。できたから持っていこうと思ってたんだけど…フレンちゃん何か急用?」
「いえ、そろそろできる頃かと思って取りにきました」
「何も団長自ら取りにこなくても…」
今までの癖が抜けないのか性分なのか、団長となった今でもフレンは人任せにせず自分で行動する。
それは良いことでもあるのだが、書類ぐらいはどんと構えて待っていてほしい。
しかし来てしまったものはしょうがない。
わざわざフレンの部屋に移動するのも無駄なのでレイヴンは話を進めることにした。
「まあ、いいか。で、新入団員の件なんだけど…」
「どうでしたか?」
今日、シュヴァーンが何をしていたかといえば、騎士団の新入団員の実力を見るための手合わせを行っていたのだ。
「このご時世に騎士団の門を叩くぐらいだからみんなやる気はあるみたいだし…後は訓練次第かな?」
「そうですか。騎士団も大変なときですが、やる気のある人がたくさん入ってくれれば何よりです」
「そうね。しっかし…」
「何か他に問題がありましたか?」
「いやいや、問題とかはないけど…最近の子ってみんなガタイいいなぁ、と思って」
今日の手合わせの様子を思いだし、レイヴンは軽くため息をついた。
全員が全員そうだったわけではないが、フレンやユーリほどの身長の者が多く、それ以上の者も結構いた。
「別に体格に制限を設けているわけではないんですが、体格や力に自信があって騎士団の門を叩く者は多いでしょうね」
「そりゃ、やっぱり体格と力はある程度比例するだろうしねぇ」
「でもシュ…レイヴンさんには体格を補って余りある技術があるじゃないですか」
「…フレンちゃんおっさんのことちっさいって思ってんのね」
ほめたつもりがレイヴンは体格のことで傷付いたらしい。
「あ、いや、そんなことは…」
「おっさんはそれがいいんじゃねえか」
「青年!?」
突然割って入った声。
声のした方を見れば、ユーリがよいしょっと窓に足をかけて部屋に入ってきた。
「ユーリ、君はまた窓から入ってきて…」
「いいじゃねえか。こっちからの方が早いんだよ」
「よくないよ。だいたい…」
「ワウ!」
「わんこ?」
フレンの説教が始まろうとしたところにあらわれたのは、ユーリの相棒とも言えるラピード。
こちらはちゃんとドアから入ってきた。
「ユーリ!急にいなくなるから探したよ!」
「カロルくん?」
続いて登場したのは凛々の明星のボス、カロル。
「あ、レイヴン!レイヴンも来てたんだ」
「今日はこっちで仕事があったからね。カロル君たちはどうしたの?」
「四人そろって近くにきたからよったんだけど、ユーリが途中で消えちゃったから探してたんだ」
「四人ってことはジュディスちゃんも来てるの?」
「うん。ジュディスはエステルの所に行ったよ。リタも来てるみたい」
「じゃあ青年はなんでここに?」
「おっさんのにおいがしたから」
「…ま、またそんなこと言っちゃって」
レイヴンに関してだけならユーリはラピードより鼻が利く。
半径100m以内ならほぼ確実に見つけだす。
ユーリのその能力のことをレイヴンはを絶対に認めようとはしないが。
というか認めてしまうのが恐くて目を背けているだけだが。
「そ、そういえば!さっき『おっさんはそれがいいんじゃねえか』って言ってたけどどういうこと!?」
「ちっこくてかわいいってこと」
「おっさんそんなにちっこくはないし、おっさんだからかわいいとかいわれてもうれしくないし!」
「ほめてんのに…」
「ほめてないっ!ユーリのバカー!」
そう吐き捨てるとレイヴンは走り去っていった。
「レイヴン泣きそうな顔してたよ…」
「泣くようなこといったつもりはねえんだけどな」
ユーリに悪気はない。
けれど悪気がないのがよけいたちの悪いこともある。
「ユーリ…」
「ワフゥ…」
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