何の脈絡もなくチビユーリとおっさん。
たぶん現パロ。
「おっさん、チョコやるよ」
「は?」
「だから、チョコやるっつってんの。オレのとっておきのチョコだぞ」
ひょんなことで知り合って、なぜか俺に懐いているユーリ少年がチョコの包みらしきものをずいっと差し出してくる。
黙っていれば美少女コンテスト優勝できそうな(口は悪いのだ)かわいい顔がこちらを見上げているが、それは受け取れないのだ。
「…あーおっさん甘いの食べられないんだけど?」
「え…?そんな…甘いの、食べられないとか…」
「なんでそんなにショック受けてんの!?」
ユーリ少年が「信じられない!」という顔をしている。
甘いものが嫌いな人間はこの世にいないとでも思っていたのだろうか。
しかしなぜ急にチョコをくれようとしたのか分からず首を傾げていると、ユーリはさらに予想外の発言をした。
「…じゃあちゅーさせて!」
「なにがじゃあなの!?…もしかしてなんかの罰ゲームとか?」
「なんでそうなるんだよ!」
「わっ!怒っこんないでよ…」
「あんたが罰ゲームとかいうからだろ!」
なにもなくてこんなおっさんにとっておきのチョコを差し出したりちゅーを迫ったりしないだろうと、思わず罰ゲームなんて言ってしまったが違うらしい。
「ごめん、ごめん。じゃあなんでおっさんなんかにちゅーしたいの?」
「好きだからに決まってんだろ!何回も言ってんのにあんた全然信じてなかったんだな!」
そういえばなんだかいやに懐かれてるとは思っていたが、まさかこんな年のはなれた少年から恋愛感情を持たれているとは思っても見なかった。
「そっか…ごめんね。信じてなかったっていうか、おっさんはおっさんだからユーリ君がそういうつもりで「好き」っていってるとは思ってなかったわ」
「今日はバレンタインだからとっておきのチョコ持ってきたのに、あんた甘いの食べられないって…」
「今日はバレンタインだったのかぁ。すっかり忘れてたわ…」
確かに町中あちこちでチョコの溢れる季節だが、甘いものが駄目なことと少々日にちの感覚がずれていたために、今日がその2月14日であるということを意識していなかった。
「オレ他は何にも用意してないし…でもあんたに何かやりたくって…」
「で、ちゅーしたいとか言い出したの?」
「うん…」
いろいろ驚きはしたが、少年の精一杯の気持ちに思わずきゅんとして、しゃがんでユーリの頭をなでなでしてやった。
「気持ちはもらっとくわ。ありがとね」
「…ちゅーは?」
「う…」
気持ちだけもらっとくわ、で丸くおさまるかと思ったがそうはいかなかった。
ユーリが目を潤ませてこちらを見上げる。
「もらってくれねえの?」
いや、それは素直にもらうわけにはいかない。
おっさんと少年がちゅーなんて(たとえ少年が強引に迫ってきているとしても)もはや犯罪じゃないか。
しかしかわいさ100点の顔が、目をうるうるさせながら見つめてくる。
自分にロリショタの気はないはずだがこれはかなりヤバい。
「う〜あ〜………ほっぺに、なら…」
折れて、しまった。
いや、無理、無理だ。こんなかわいいおねだり断れない。
しかし、ユーリを見ればちょっと不満そうな顔をしている。
ということはやはり口にするつもりだったのだろうか。
それでも、さすがにこれ以上は無理だと納得してくれたのか手を顔に向かって伸ばしてきた。
「おっさん、もうちょっとこっち」
乞われるままに顔をよせると、あたたかくてやわらかい唇が頬に触れた。
「…」
「…」
なにこれ、恥ずかしい。絶対、顔赤くなってる。
やる気満々で迫ってきたユーリも顔を赤くしてる。
二人で数秒固まった後、照れ隠しにどちらからともなくえへへと笑い出した。
あとがき