「…ってことがあったのよ」
城を飛び出したレイヴンは、ダングレストに向かおうと船を探していたところ、ちょうど通りがかったパティの船に乗り込んでいだ。
「それでわざわざうちの所まできたのか?」
「いや、それはたまたま、船に乗ろうと思ったところにパティちゃんが居たから…」
「そこは嘘でも『パティちゃんにあいたかったのー』とか言えばいいものを…」
舵をあやつるパティの横で、レイヴンはどんよりとした空気をまといひざを抱えている。
「だいたい何をそんなに落ち込む必要があるのじゃ?皆はほめてくれているのじゃろ?」
「落ち着いて考えればそうなんだけど…やっぱりおっさんももうちょっとでかかったらなーとか思うこともあるわけよ。それにおっさんはおっさんだから、かわいいとかいわれてもからかわれてるような気がするわけ」
「それだけレイヴンが皆に愛されているということじゃろ?そもそもこの海の大きさに比べれば10cmや20cmの身長の話などたいした問題ではないのじゃ!」
「パティちゃん…」
かわいい少女の形をしていても、実は人生経験豊富で男前なパティの力強い言葉にレイヴンの顔があがる。
「ほら、来たぞ」
「きたって何が…あ…!」
パティが指差す先を見ればバウルと、バウルが運ぶフィエルティア号が見えた。
パティの船に近付いてきたフィエルティア号からは待ちきれないとばかりに次々と人が飛び下りてきた。
「みんな…どうしてここに…」
「レイヴンが泣きながらお城を飛び出していったっていうからみんなで探してたんだよ!」
「ワウ!」
「レイヴン…ごめんなさい」
エステルが一歩前に出てぺこりと頭を下げた。
「えっ、なに!?そんな、嬢ちゃん、頭下げるとかやめてっ…」
「ほめたつもりだったんですが、それが逆にレイヴンを傷つけてしまったんですね…」
エステルに続いて皆が次々と謝罪を口にする。
「あたしも、ごめん。おっさんがそんなに気にしてると思わなくて…」
「私も…言い方が悪かったわ。ごめんなさい」
「おっさん、その…悪かったな。オレも、おっさんがそこまで気にしてるとは思わなくて…」
「僕も…配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
神妙な面持ちで皆に謝罪されて逆に居心地が悪くなったレイヴンは慌てて手を振った。
「いやいや!そんな!おっさんが気にし過ぎだったのよ。みんなそんな顔しないで」
そう言うとみんなの顔が明るくなったのでホッと胸を撫で下ろすと、なぜかユーリが一歩前に進み手を差し出した。
「じゃあさ、おっさん…オレと一緒に来いよ。絶対に幸せにするからさ」
「は?」
いきなりプロポーズのような台詞。
いきなりすぎて一瞬意味が分からずぽかんとしていると、間にジュディスが割って入った。
「あら、だめよ。おじさまは私が幸せにするんだから」
「へ?」
美男と美女の間で見えない火花が散っている。
ますます意味が分からず二人を見ていれば、ほかの面々からも次々と声が上がった。
「わ、わたしもがんばりますから!レイヴン私と一緒にっ!」
「こればかりはエステリーゼ様でも譲れません!レイヴンさんは騎士団長である僕が責任を持って幸せにしてみせます!」
「おっさん、忘れちゃ駄目よ!あたしがいればいつでも魔導器診てあげられるんだから!あたしと一緒が一番いいに決まってるわ!」
「ああ!ボクも!ボクもいるんだからね!」
「えええええ!?」
さあ誰を選ぶ?とばかりに皆に迫られてたじろぐレイヴン。
「え、あ、え〜と…」
「じゃあ一番最初におっさんを捕まえたやつのものってことで」
どうしていいか分からず言葉を濁していると勝手に話を進められてしまった。
「おっさんものじゃない!」
「みんないくぜ?よーい…ドン!」
「おっさんの意見は無視!?って、あー!」
海のど真ん中、船の上で突如おっさんの争奪戦が始まった。
ドタバタと皆が追いかけっこをしているのを、パティとラピードは参加せず少し離れたところで見ていた。
「ラピードは参加せんのかの?」
「ワーウー」
「うちはな、後で助けに入った方が好感度があがると思うのじゃ。もしかしてラピードも同じ考えかの?」
「ワウ!」
「おお!ユーリとジュディ姐に挟まれたのじゃ!そろそろ助けに…あ、ラピード!」
「ワウワウ!」
「ラピードに走られたらうちは追い付けんのじゃー!待つのじゃー!」
あとがき