正直、あのいい加減そうなレイヴンがどう現場を仕切るのか少々しんぱ…いや気になっていたのだが、その指示は的確で分かりやすく、プロモーションビデオの撮影はさくっと終わった。
正直さくっとでき過ぎて恐いくらいだが、いいものが撮れたという手応えはある。
レイヴンを選んだ俺の目に狂いはなかったぜ。
撮影自体は終わったのだが、最後にもう一度見ておきたいとレイヴンが映像をチェックしている。
その様子を邪魔しないように少し離れたところから見ていた。
時折、今まで見たことのない何かを考え込むような真剣な顔をしていてドキリとした。

(これが俗に言うギャップ萌えってやつか…?)

暫くするとチェックが終わったのかこちらに気付きレイヴンが手をあげた。

「よ、おつかれさん」
「おつかれさん。問題なかったか?」
「ないない。ほんと一応見ておきたかったってだけだから」

レイヴンはなんだか機嫌がよさそうだった。
これは都合がいい。

「な、なあ…今日、飲みにいかねえ?」
「今日打ち上げないんじゃなかったけ?」
「だから二人で。ダメか?」
「駄目っていうか…おっさん今日車なのよ」

撃沈。
今日は打ち上げもないし(皆で飲むのももちろん楽しいのだが)おっさんとまた二人で飲みにいくチャンス!とか思ってたのだがツイてない。

「ちょっと、そんなに落ち込むことじゃないでしょ」
「ああ…そうだな、いや、まあ」
「ん〜じゃあ、おっさん家くる?」
「へ?」

何ですと?家?自宅!?
いきなり家にいっていいのか!?

「ちょっとね、いい酒手に入れたのよ。どう?青年がよければだけど…」
「行く!」
「わっ!」

さっきはツイてないと思ったが、これはむしろツイてる!
いきなり気になるヤツの家で二人飲みだなんて!
あ、おっさんちょっと引いてる?
落ち着け、落ち着けオレ…

「なに?いきなりテンションあがっちゃって。青年そんなお酒好きなの?」
「ま、まあな。けどそんないい酒、二人で飲んだら分け前減っちまうぞ。いいのか?」
「今日は気分いいからね。お裾分け。まあ、一人で飲むのも寂しいしねぇ」

よっしゃあ!と心の中でガッツポーズをとった。
引かれないようにクールを装いながら。

「じゃあ、準備できたら駐車場に行ってて。おっさんもすぐ行くから」
「ああ、わかった」

ああ、オレいつからこんなにおっさんのこと好きになってたんだろう?
まあいいかそんなことどうでも。
うれしくて、スキップでもしそうなのを自重しつつ、オレは駐車場に向かった。


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