一周年記念、玉城様リクエスト。
『キスが好きなユーリでユリレイ』
しっとり甘?です。





『ちゅっ』

指先に、キスをされた。

ベッドに腰掛けて武器の手入れをしていた手を、不意に引かれて。
ユーリは指先に唇を寄せたまま、こちらを見上げるも何も言わない。
ただ、その瞳はなんとも色っぽい。
こちらも黙ってその瞳を見つめていれば、ユーリのくちづけは、ゆっくりと、少しづつ上へ登ってきた。
ユーリに触れられているのと反対の手の中にある小刀は、まだ手入れの途中だったが、サイドテーブルに置いた。
片手で鞘におさめるのは面倒だったので、抜き身のままで。
そうしてやっと、ユーリが口を開いた。

「もういいのか?」
「片手塞がれてちゃどうしようもないでしょうが。どうせ放す気ないんでしょ?」
「まあな」

座っていたベッドにそのまま、押し倒されて唇をあわせる。
最初は啄むように、それからだんだん深く。
服を脱がされながら、息が続かなくなるまで深く深くくちづけられて、一度離れたユーリの唇は、首筋から鎖骨、そして胸の魔導器へ。
優しく触れられて、それに感覚はないはずなのに体が震える。
偽物の命であるそれを大切にしてくれる彼が愛しくて、頭をなでるように彼の美しい髪に指を絡ませた。
ちゅっ、ちゅっ、とわざと音をたてながらユーリのキスがあちこちにふってくる。
時折強く吸われたところは、赤い印になっているのだろう。

「ほんとユーリはキスするの好きねえ」
「ちょっと、違うな」
「ちょっと違う?」

じゃあこの状況は何なんだ、と首を傾げると、ユーリはにやりと笑って言った。

「レイヴンにキスするのが好きなんだよ」
「…ああ、そう」

言われたことが恥ずかしくて、わざと素っ気なく返事をして横を向いたが、どうせ耳やほおの赤いのでばれているだろう。
その耳にもキスをされてますます恥ずかしい。

「かわいいな」
「かわいいとかそんな…」

三十路男に言う台詞じゃないだろう。
これが、からかっているのでもなく本気で言っている様なので、おかしなやつだなぁ、と思うけれども、さすがにそれは口にしない。
ユーリは、そっぽを向いている俺の顔を正面に向けさせて、今度はこめかみや額にキスをする。

「もう、いいからっ…」
「やだ」
「しつこいって…」

キスが嫌なわけではないから、強く拒否を示すことはしないけれど、少ししつこいと思う。
正直、火照り始めた体はもっと強い刺激を求めている。
けれどユーリはキスだけを続けて、ついに足にまで唇を触れさせる。

「ちょっ、ユーリ、そんなとこっ…!」

思わず上半身を起こす。
足にキスをされるとか恥ずかしすぎて、それはさすがに止めたい。
頭を押し返そうとした手は一度払われて、もう一度手をだせば、その手は捕まれユーリが顔を上げた。

「頭のてっぺんからつま先まで、余すとこなくキスしたいし、じっくり愛したいんだよ」
「…」

美形のマジ顔は、ずるい。

もう、何も言葉が出なくて、起こしていた上半身はぱたりとベッドに沈んだ。
恥ずかしいのか、嬉しいのか、もう何がなんやら。
結局、彼の気が済むまでされるがまま、キスの雨を全身で受け止め続けるしかなかった。


あとがき